物語をタロットリーディングに活かす|ギリシャ神話「神々の戦い」

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皆様こんにちは、
『本気のタロット講座』へようこそ。

今回の記事は
本気のタロット講座「番外編」として…
ギリシャ神話を取り上げ、
『小説や物語をリーディングに活かす』という題材でお送りしたいと思います。

今回の物語は長編ですので、
何回かに分けて読んで戴ければと思います。
尚、読みやすくするため
物語上、筆者の多少の脚色が御座いますことをお詫びいたします。

目次

~はじめに~

文学や映画は、
様々な価値観や世界観、
多くの人生に触れることが出来ます。

筆者は師から…
「多くの世界に触れる程、タロッティストにとっては有利」
と教わりました。

例えば、
様々な物事に携わり、
それについて考えたり悩んだりするといった
「現実的な経験」は、そのまま武器になります。
ですが、人ひとりの時間には限りがあり、
そう多くの体験をすることが出来ないのも事実です。

そこでお勧めなのが、
文学や名作映画といった「物語」を通して別の世界に触れる。
という方法です。

しかし、
物語を観たり読んだりして
「あ~面白かった」で終わらせてはいけません。

その物語を通して
『何を感じ、何を得たのか?』
という事を自問自答して初めて、自身の力になってくれます。

その物語を自分の言葉で表現し直せた時が、
自身の糧になった瞬間になるのですね。

本記事は、
『小説や物語から学ぶ』という題材で、ギリシャ神話の一部を取り上げます。

そして「あとがき」にて、
筆者が何を感じ、何を考えたのか?
タロットに当てはめたらどのカードになるのか?

などを書かせて戴いております。

今回の記事を
「物語をリーディングに活かす方法」として
皆様のお役に立てれば嬉しいです。

それでは、
本気のタロット講座「番外編」
『ギリシャ神話 ~神々の戦い~』
是非、楽しんでください。

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ギリシャ神話 ~オリュンポスの神々~

紀元前、遥かオリュンポスの大地にウーラノスという神がいました。

ウーラノスは最初に宇宙を統治した神とされています。
しかし、支配というのはひとつの代で永遠に続くものでは無く、それを脅かすものは必ず出てくるものです。

このウーラノスも例外ではなく、
自身の息子クロノスに倒され、その統治を終わらせることになります。

今回のお話の主人公は「ゼウス」。
二番目に宇宙を統治したクロノスの末子のお話です。

ゼウスの誕生

クロノスにはレアーという妻がいて、
後に「ゼウス」という子供を設けます。

父、ウーラノスを倒し、
全宇宙の実権を握ったクロノスでしたが、
その時、父からこのような不吉な預言を受けます。

「お前が私を倒し王権を手に入れたのと同じく…その息子も王権を獲りにかかってくるだろう」

不安を覚えたクロノス…
妻レアーとの間に子供をもうけるたび、
その子が赤ん坊のうちに、次々と体内に飲み込んでしまいます。

末子ゼウスが生まれた時、妻レアーは考えました。
「これ以上、子を失うのは最悪なこと…何とかして末子ゼウスは護らなければ…」

妻レアーは…
生まれたゼウスの代わりに大きな石を産着に包み、夫へと見せました。

「見て、とても可愛い子よ」

案の定クロノスは、赤子の顔も確認せず、
末子に見せかけた石を飲み込んでしまいました。

クロノスはそのような事があったとも知らず、
「これで私の王権は安泰だ」と過ごしています。

ゼウスの成長

ニコラス・オーギュスト・ヘス 作(1818年)

母レアーのおかげで助かったゼウスは、
父クロノスの知らない場所で成長を遂げます。

月日が経ち…
父クロノスが自身の王権存続の為に、
兄たちを飲み込んでしまっていたことを、母レアーから聞きます。

ゼウスは、父に飲み込まれた他の兄たちを、父の胃袋から助け出そうと考えました。

その兄たちとは、
「ポセイドーン」「ハーデース」といった、後の名立たる強者たちです。

その計画を実行する為、
ゼウスは母レアー、
知恵の女神メーティスと手を組み、
クロノスが隙を見せるであろう晩餐の時を待ちます。
そして、特製の嘔吐薬を神酒に混ぜ、クロノスに飲ませることに成功しました。

体内に飲み込んだ兄たちを次々と吐き出すクロノス。

こうして無事、
ゼウスは兄たちを奪還することが出来ました。

事の次第を知った兄たちは、
父クロノスに復習を誓います。

ゼウスはその復習を手伝うため兄たちと手を組み…

ここから
ゼウス軍 vs クロノス軍
『ティーターノマキアー』という戦いが始まります。

ティーターノマキアー

クロノス軍とゼウス軍の戦いは、実に10年以上にも及びます。

その戦いの間、クロノスの母であり、大地の女神であるガイアは…
兼ねてから息子であるクロノスの横暴さに見かねていました。
そして、その息子と一進一退の戦いを繰り広げるゼウスたちに知恵を貸します。

ガイアはゼウスたちに、
3人のヘカトンケイル(百手巨人)
3人のキュクロープス(鍛冶の名匠で単眼の巨人)
それらを仲間に加えることを勧めました。

ガイアの言うところ、
その6人はタルタロスの深淵に幽閉されていると言います。

ゼウスたちは、
この戦いを勝ち得るため、仲間を求め、
幽閉された「3人のヘカトンケイル」と「3人のキュクロープス」の解放に向かいます。

実はヘカトンケイルとキュクロープスは、
ガイアによって産み落とされていたのですが…
そのあまりの醜さゆえに、父ウラノスによって奈落の深淵に閉じ込められていたのです。

ガイアはこの戦いに乗じて、
自分の息子たちを奪還したいと考えたのかもしれません。

ゼウスと兄たちは
タルタロスの深淵から彼等を救い出しました。

タルタロスの深淵から救い出されたキュクロープスとヘカトンケイルは
ゼウスたちに感謝を表し、そして忠誠を誓います。

ヘカトンケイルは百の腕から繰り出される力をゼウス軍のお役に…
キュクロープスはその卓越した鍛冶技術で、ゼウスたちに究極の武器を造り、それを献上しました。

ゼウスにはすべてを破壊し焼き尽くす雷霆(らいてい)を…
ポセイドーンには大海と大陸を支配する三叉の矛を…
ハーデースには姿を見えなくすることのできる隠れ帽を…。

ゼウスたちは
究極の武器と、そして力強い仲間とを得て、父クロノスの軍に挑みます。

ゼウス軍の圧倒

究極の武器を手にしたゼウスの軍は、
そこから圧倒的な強さを、クロノス軍に見せつけます。

ゼウスの雷(いかづち)は天変地異をも超える破壊力で敵軍を薙ぎ払っていきます。
その雷の光は遠くの敵の目を焼き、その雷音は鼓膜を破壊します。

ポセイドーンの三叉の矛は大地を揺るがし大海を一叉両断、敵を飲み込んでいきます。

更に、隠れ帽で姿を消したハーデースが敵軍の武器を次々と奪い、どんどんと戦力を削り失わせていきます。

その間も、仲間のヘカトンケイル達は一度に300もの巨岩を休みなく投げ続け、クロノスの軍を打ち負かしていきます。

クロノスの軍はゼウス軍の圧倒的な攻撃に対し応戦を続けましたが、遂に敗れ去り…
「タルタロスの深淵」へと封印されたのでした。

ゼウスと兄たちは父への復讐を果たし、
クロノスを打ち破ったゼウスは神々の最高権力者と成りました。

その後
ゼウス、ポセイドーン、ハーデースの三神は平等に「くじ」で、それぞれの支配する場所を決めます。

「くじ」というのは決して投げやりなものではなく、
神話、紀元前から「全ての者に平等」なものとして行なわれていたのですね。

その平等なくじ引きにより、
ゼウスは天界を、
ポセイドーンは海界を、
ハーデースは冥界を治めることになったのです。

しかし…
やはり現実の世界でも、神話の世界でも怒りを買うというのはあるもので…
今後、ゼウスたちはそれに巻き込まれていくことになるのです。

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ガイア怒りの刺客

クロノスの母で大地の女神ガイアは、
自身が知恵を貸したとて、
クロノスをはじめ、その軍に居た自分の子供たちがタルタロスの深淵へ封印されてしまったことに憤慨しています。

ガイアにとっては
懲らしめるだけで良かったものを、
そして、自分の子供を一度ならず二度までもタルタロスの深淵に封印されてしまったのですから…。

『子 vs 孫』という戦の結果であっても、
こうなってしまえばガイアの怒りの矛先はゼウスに向かいます。

そしてガイアがゼウスに差し向けたのは、ギガースと言われる巨人族です。

このギガースは、夫ウーラノスの性器が切り取られた際に流れた血をガイアが受胎したものとされています。

何故ウーラノスの性器は切り落とされたのか…?

夫(ウーラノス)は、自分(ガイア)との間に生まれた「ヘカトンケイル」「キュクロープス」を、その醜さゆえにタルタロスの深淵に閉じ込めた…。

その怒りから、ガイアは末子クロノスに命じ、刃が魔法の金属「アダマスの鎌」でウーラノスの男性器を切り落とさせたのです。

直情的なガイアの狂気が伝わってくるお話です。

ガイアは自身の息子たちの怒りと、
そしてオリュンポスの神々から宇宙の支配権を奪い取るために…
次の刺客「ギガンテス巨兵軍」を送り込みました。

ここから
ゼウス軍 vs ギガ―ス
『ギガントマキアー』という戦いが始まります。

ギガントマキアー

この戦いで、
ゼウスたちは山のような巨人と対峙することになるのですが…

このギガースと呼ばれる巨人は、
今までゼウスたちが戦ってきた敵とは一味違いました。

そこには、このような預言を受けていたからです。

ギガースには、
どんな強力な武器を以てしても、
オリュンポスの神々では倒せない。
彼等は人間の力を以てしか倒せない。

という預言です。

この預言によりゼウスたちは、対ギガース戦に手こずります。

ゼウス:
この巨兵軍は、預言の力により我々では倒すことが出来なくなっている。
正確には攻撃が効かないというより、トドメを刺せないという状態だ。

ポセイドーン:
負けはしないが、このままでは勝つことも出来ないな…

ハーデース:
その予言によれば、人間の力を借りることが出来れば奴らを倒すことが出来るそうだ。
人間との子に力を貸してもらおう。

ゼウスはこの戦いの勝利へと、
アルクネーメーという人間の女性との間に
「ヘーラクレース」という子をもうけ、対ギガース戦のため自軍の味方に加えました。

一方、ガイアもいずれゼウス軍がそうくることは判っていたので、
ギガース唯一の弱点を無くすため「人間に対しても無敵になる薬草」を生えさせようとしていました。
それをギガースが食すれば、
オリュンポスの神々にも、人間にも負けることのない無敵の巨兵軍が誕生します。

しかし、ガイアのその野望は儚くも終わります。
その薬草の事を知ったゼウスが、その薬草の在りかを見つけ、全て刈り取ってしまったからです。

ゼウスのこの行動により、
ギガースは完全無欠を得る事は出来ませんでした。

その間もギガントマキアー戦線は激しく続いています。

ギガ―ス巨兵軍は山を割り、大地を引き裂き、ゼウス軍に向かって進軍をしてきます。
ゼウス軍は、尚も猛々しくそれを迎え撃ちます。

ゼウスの持つ天変地異を超える雷霆(らいてい)は、向ってくるギガース軍を焼き払い、ことごとく蹴散らしていきます。
この戦いには「アテーナー」「ヘカテー」といった女神も参戦しており、
灼熱の炬火(きょか=たいまつ)、
灼熱の火山、果ては島そのものをギガース軍に落とすなど…
闘神と見まがうほどの戦いを見せています。

この戦いの様子は、父クロノスの軍との激闘を彷彿とさせるものでした。

ゼウス軍の猛攻により、次々と戦闘不能になっていくギガース巨兵軍。
今までならば、この後…
トドメを刺すことが出来ず、敵に撤退と回復の時間を与えてしまっていましたが…
ゼウス軍にはこの戦いを終わらせる切り札ヘーラクレースがついています。

彼はこの戦いに備えた「巨人の心臓を貫く強大な毒弓」を構え、
雷や炎弾で負傷したギガースたちに、トドメの一撃を与えていきました。

ギガースの無敵さに手こずりはしたものの、
ゼウス軍は勝利を飾り、王者の座を守ることが出来ました。

その勝利の裏で、
この戦いの勝者を知ったガイアは、さらなる怒りに包まれます。

そして、
最強の刺客をゼウス軍に送り込むのです。

これがゼウス軍にとっての最後の戦いになります。

暴神テューポーン誕生

ギガントマキアーの勝者を知ったガイア。

クロノスに続き、ギガースと…
自身の身内がゼウスにより、ことごとく打ち倒されてしまいました。

もともと直情的だったガイアの性格です…
ここまでくると、もう後には引けません。
怒り心頭に、完全にゼウス軍を滅ぼすことを誓い、奈落へと歩を進めます。

そこには、ある神が居るからです。
その神の名はタルタロス。

ガイアとは兄弟姉妹関係にあり、奈落の神にして、カオスより生まれた最初の神です。

『このタルタロスと交われば最強の子を設けることが出来る!!』

そうガイアは考えたのです。
その企ては見事成就し、ガイアは「怪物テューポーン」を産み落としました。

怒りと奈落から生まれたその形態はまさに怪物と呼ぶにふさわしく…

その巨体は宇宙の星々に届き、腕を伸ばせば世界の東西を覆うことが出来ます。
上半身は人の型、下半身は巨大な毒蛇がとぐろを巻き、肩からは百の蛇の頭が生える。
その声は山々を鳴動させ、炎のような目には、灼熱の眼光を携え…
さらには、神々と同じ不死身の肉体を持っているのです。

激震のオリュンポス

ガイアの企ては、
オリュンポスの神々も知るところでした。

今までの戦いで、
多くの修羅場を越えてきた神々は
次に、ガイアがどのような刺客を送ってこようとも、それを迎え撃つ気概がありました。
次の戦いに備え、神々は緊張を緩めることなく日々を過ごしています。

そして運命の日はやってきました。

突如、オリュンポスの大地を覆う暗闇。
見上げるゼウス軍…
神々の目に映ったのは、
この世の終わりをイメージさせるような悪を身にまとう、暴神テューポーンです。

その姿、ほとばしり出る悪気…
ゼウス以外のオリュンポスの神々は、瞬間!!
自身が亡き者になるイメージに心を潰されました。

次にどんな戦いがあろうとも、
必ず迎え撃つ気概を持っていた神々も、
星よりも巨大を有す悪気、その形相にはひとたまりもありません。

『格が違いすぎるッッ!!』

怖れを成した神々は、
動物へと姿を変え、蜘蛛の子を散らすようにエジプトの方向へ逃げて行ってしまいました。

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ゼウスvsテューポーン

自軍は…
この暴神に恐れを成し、散り散りになってしまいました。
この場に残ったのはゼウスたった一人。

千の軍が居なかろうとも、私の心は決して折れない!!

ゼウスはこの怪物との一騎打ちを果たそうと、
雷霆(らいてい)と、金剛の鎌を持ち、オリュンポスの大地に立ちます。

視線を交わす両者。

数舜の時が流れ、
先に仕掛けてきたのはテューポーン。

「自身の意味はゼウスを討つこと!!」
とばかりの容赦の無い攻撃を仕掛けます。

その攻撃は大地を削り、海を割り、ゼウスの足場をことごとく無くしていきました。
その猛攻を回避しながら、テューポーンを睨めつけるゼウス。
テューポーンの背後には、とことんまでゼウスを潰そうというガイアの怒りの残像さえ視えるようです。

尚も闘志を奮い立たせるゼウス。
覇気で負けては、それだけで敗北を喫することを、多くの戦いを通して理解しているからです。

ゼウスは真っ向勝負ではテューポーンの剛腕には敵わぬと
遠距離からは雷霆を放ち、接近戦では金剛の鎌で切りつけ、また距離を取るという戦法に出ます。
有らん限りの力でテューポーンに向かって雷霆を放つゼウス。
その凄まじい雷鳴は、天地を揺るがし、タルタロスの深淵にまで轟きました。

雷霆に負けじと、その口から業火を放つテューポーン。
大地は炎上し、海は煮えたぎります。
ゼウスは灼熱に包まれるも、その覇気を以って耐えることが出来ています。

両者の戦いは、大地を、地平の果てまでも震えさせました。
冥府を支配するハーデースも、タルタロスの深淵に落とされた巨人たちも、この力には恐怖するほどです。

どれくらいの時間が経っているのか…
互角の戦いに戦況を見出せないゼウスは、
狙いを変え、渾身を放った雷霆で、テューポーンの肩に居る百の蛇を撃ちました。

その一撃が功を奏してか…
ゼウスは、暴神が一瞬よろめく姿を捉えました。

これを勝機と捉えたゼウスは一気に距離を縮め、金剛の鎌で勝負を賭けに行きます。

しかし…
勝負というのは最後まで何が起こるか判りません。
ゼウスが近づいてくるのを待っていたかのように、テューポーンはゼウスを捉えることに成功します。

「この瞬間を待っていたッ!!」

ゼウスは締めあげられ、その手から金剛の鎌と雷霆を取り払われ、両手足の健を切り落とされてしまいました。

さすがのゼウスも、この瞬間に限りなく希望を失い…
テューポーンは失意のゼウスをコーリュキオンの洞窟に閉じ込めました。

ゼウスの生涯におけるたった一度の敗北です。

その後、テューポーンはゼウスの健を熊の毛皮に隠し、
半獣の竜女デルピュネーを番人に置き、自身の傷の治療と勝利の報告のため、母ガイアの下へ向かいました。

ヘルメスの活躍

ゼウスはコーリュキオンの洞窟で、
この後の未来に希望を見いだせないまま、失意の時間を過ごしています。

一方、ゼウスが囚われたことを、いち早く知ったのは…
その息子であり忠実な部下、伝令の神ヘルメスでした。

ヘルメスは伝令のみならず、知能、身体能力共に優れた神で、
狡知に富み詐術に長けた計略の神でもありました。

この戦いを終わらせ、
オリュンポスに再び平和をもたらすのはゼウスしかいない。

彼は囚われたゼウスを救い出すため、
パーンという神と共に、ゼウスの落とされた健の奪還に向かい、コーリュキオンの洞窟へ…。

ヘルメスが集めた情報から「健」の隠し場所を探し当てるのは、そう難しいことではありません。
それに、詐術を使わせたら…
オリュンポスではヘルメスの右に出る者はいないというのです。

ヘルメスは、身分を装い番人に近づきます。

そして言葉巧みにデルピュネーをそそのかし「ゼウスの健」を見事奪い返しました。
その話術は、エデンの園でエヴァを誘惑したヘビさえも尻尾を巻く巧みさだったようです。

そして、奪われた手足の健をゼウスに戻し、治療を施します。
ゼウスは、コーリュキオンの洞窟から救い出してくれたヘルメスに感謝をすると、
少しの静養の後、態勢を整え、再びテューポーンとの戦いに挑みます。

リベンジマッチ!!

その生涯において、初めての敗北を喫したゼウスは自身を戒めました。

あの敗北は…
勝機などと浮かれ、奴の策に落ちた自分には良い教訓だった。
戦においては、どんな時も「勝利」の二文字を手に入れるまで勝機などはない。

ゼウスは尚一層の闘志を高め、
一切の油断なくテューポーンに挑むのです。

決戦の準備を整え、
テューポーンと相対すべく再びオリュンポスの大地に立つゼウス。

両者の間に、最後の戦いが繰り広げられました。

テューポーンは、その剛腕と火炎を、
ゼウスは、先の戦いを基盤に雷霆と金剛の鎌を…。
オリュンポスの大地は、再び激しい炎に包まれていきます。

先の戦いでの教訓を胸に、
どこに有利を見つけることもなく、
今、与えられた瞬間に、全力の一手を撃ち続けるゼウス。

テューポーンも灼熱の炎を吐き、
その剛腕で大地や山を削りながら、ゼウスに応戦します。

大地は燃え上がり、空を裂くような激闘は、
オリュンポスの大地から遥か離れた大地にも、大地深くのタルタロスの深淵にも、強く響き渡ります。

この場に居合わせない多くの神々も、
奈落に身を落とす神々も、この戦いの結末に息をこらしています。

決戦の大地では、
ゼウスの覇気に徐々に押され始めるテューポーン…
戦況はゼウスに圧倒的有利に傾き始めました。

しかし…
先の戦いで「自身が信頼した勝利」に裏切られたゼウスには、全くの油断はありません。

一切の手を緩めず、テューポーンに猛攻撃を仕掛けるゼウス。

たまらずテューポーンは、態勢を立て直すための撤退を余儀なくされました。

しかし、これは当てのない敗走ではなく…
テューポーンにはゼウスに勝利するための秘策、向うべき場所があったのです。

テューポーンの秘策

その超巨体を天高く掲げ、
ゼウスから距離を取るテューポーン。

暴神はそのまま、
運命を司る三女神「モイラ」と呼ばれる女神達の居る場所へと向かいます。

クロートー、ラケシス、アトロポス。

その「モイラ」と呼ばれる三女神が持っている
『どんな願いも叶える勝利の果実!!』
テューポーンはそれを奪いに行くのです。

ゼウスを突き放し、猛スピードで空を翔る暴神。

女神たちも、この場所に不穏な力が近づいてくる事に気づきます。
その力が「勝利の果実」を奪いに来ていることも…。
何としても、その果実を渡すわけにはいきません。

そして数瞬後、
女神たちの頭上を巨大な影が覆います。
見上げると、そこには亜空を纏った暴神が…。

『ワタシがココへ来た理由は…解るな!?』

大気を揺るがす暴神の声…

運命を司る女神たちは、
表面的には
まるでそれに圧倒される様な振舞いで、
しかしその実、心の中は氷のように冷静に…
テューポーンに「果実」を手渡しました。

『ワタシの勝利ダ…!!』

勝利の果実を一飲みにするテューポーン。

が、その瞬間…
テューポーンの力は見るまに失せていき、
大きな音を立てて崩れ落ちました。

運命の女神たちが手渡した果実は、
どんな願いも叶うという「勝利の果実」ではなく…
決して望みが叶うことは無くなるという『無常の果実』だったのです。

不穏な力が近づいていると気づいた女神たちが、
既にこの果実を準備していたのでした。

決着の刻

己が再起不能となった事を悟ったテューポーンは、
ガイアの元へ逃げようと、最後の力を振り絞ります。

暴神を討とうと迫りくるゼウスに背を向け、
目につく巨岩を投じ、防衛を尽くします。

しかし、
戦いに背を向けた暴神は暴神にあらず…
巨岩の一投一投は、虚しく空を切ります。

敗走を続ける暴神は、トラーキアの地にて、
ハイモスの山脈を切り取り、高々と持ち上げました。

これがテューポーン最期の攻撃です。

ゼウスの頭上に向け、
山脈を叩き落そうとする暴神。

その瞬刻!!
ゼウスは掲げられた山脈に向かい、
雷霆をあらん限りの力で放ちました。

雷を受けた巨山は真っ二つに割れ、
そのままテューポーンを押し潰していきます。

これにより、
絶望的なダメージを負ったテューポーンは、
残された力で尚、足掻こうとするも…
もはやゼウスに敵うことはありませんでした。

そのままゼウスは、
シケリア島までテューポーンを追い詰め、
その地に3つある火山の中で、
最も標高の高いエトナ火山の中に堅く封印を施しました。

この封印をもって、ギリシャ神話最強の戦いに終止符が打たれたのです。

その後、テューポーンは、
火山の重圧から必死で逃れようとしますが…
完全に封印を施された中では、
どんな策を弄しても脱出することは出来ませんでした。
もがけばもがくほど、火山が噴火するばかりです。

今も、遥か天空から
エトナ火山の噴火を見守るオリュンポスの神々。

その火山噴火は、
暴神テューポーンの厳重なる封印の証とし、
大地に安寧があり続けることを約束しているのでした。

~ fin ~

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~あとがき~

この物語を通して考えたこと。

筆者は、今回の物語を
「運命の輪」に当てはめてみました。

例えば…
運命の輪というカードのテーマは、
人と人との引力、環境の変化、人生の転機、
物事や出来事との出逢いや引き寄せ、
自身の行動の結果巡ってくるもの…
運命や運勢といった摂理をテーマとして読む事も出来ます。

オリュンポスの神々も「運命」や「引力」という巨大な力の中にいました。

絶頂期ばかりではいられない、
しかし、悪い時期が来ても、迎え撃つことが出来る。
見事撃退に成功すれば、再び好調の波に乗っていられる。

但し、そこで傲慢になったり、
尊大な振舞いをしていれば、反旗を翻してくる者は多くなります。
敵が多くなってくれば、
必然的に戦い(悪い時期)に遭遇することが増えます。

この物語には、
タロット「運命の輪」の要素が多く盛り込まれていたように感じました。

テューポーンなどのいわゆる悪役が画策することは、大体成就はしないですよね。
たとえ上手く行っても、その栄華が続くといった事はありません。

悪い企ては結果、自身を追い込みますし、
悪事を働けば、一周して自身に還ってきます。
こういった巡り会わせ、因果のようなものも…
『運命の輪』に当てはめられると思います。

ゼウスがテューポーンとの一騎打ちの際、
「勝てると踏んで油断をした」部分がありました。
その油断のせいで、ゼウスは敗北をしてしまいましたね。

この「いつ何時も油断をしてはいけない」というのも、
運命の輪のメッセージであると筆者は考えます。

人生に当てはめるなら、
好調の波の時、調子に乗って浮かれ、
後先考えない無謀な振舞いをしてしまえば、
目の前の落とし穴には気づけません。

ちょっとした不祥事で、
タルタロスの奈落へ落ちてしまいます。

だからこそ、
調子の良い時は謙虚に、より自分を律し、
感謝を忘れないで進む事が大切だと、筆者は思っています。

人生で落とし穴に落ちてしまった時は、
自分を客観的に見つめることが大切です。
勿論、その穴にいる時は冷静になるのは難しいです。
でも、どこかの瞬間で、冷静に自分を観れる時が来ます。

そして最も大切なのは…
その落とし穴の時期が終わった時、
その出来事を忘れてはいけません。
「あの時何故そうなったのか?」
「次はどこに気を付けるべきなのか?」

このように考える事が出来れば、
今後はより慎重に成れます。
同じ落とし穴に二度落ちることはないでしょう。
テューポーンに敗れたゼウスは、その部分を大切にしました。
だからこそ雪辱を果たせたのです。

こういったことも
運命の輪のメッセージと重ねられると筆者は思っています。

物語の読み方を少し変えると、
タロットリーディングも変わります。

今回の記事が
皆様のお役に立てれば嬉しいです。

それでは、
長くなってしまいましたが
最後までお読み戴き
誠に有難うございました。

参考文献

ギリシャ神話の最高神ゼウスとは?
ウーラノス(Wikipedia)
クロノス(Wikipedia)
ゼウス(Wikipedia)
メーティス(Wikipedia)
ガイア(Wikipedia)
キュクロープス(Wikipedia)
ヘカトンケイル(Wikipedia)
タロタロス(Wikipedia)
ヘルメス(Wikipedia)
ティーターノマキアー(Wikipedia)
ギガントマキアー(Wikipedia)
テューポーン(Wikipedia)
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