物語をタロットリーディングに活かす|大アルカナ「節制編」第三部~トビト記~

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皆様こんにちは
『本気のタロット講座』へようこそ。

大変お待たせを致しました。

今回の記事は、
タロット大アルカナの解説
節制編 第三部といたしまして…

聖書外典、または旧約聖書続編より
『トビト記』という物語をお送りいたします。

今回の物語、
当初は主要な部分だけを要約してお送りしようと執筆しておりましたが…
筆者の本気グセが出てしまい、トビト記全編をお送りするカタチと成り、
投稿が遅くなってしまいましたことをお詫びいたします。

今回の物語も
『ギリシャ神話~神々の戦い~』
の時と同じく長編となっております。

物語の最後には番外編としまして…
『ストーリーから節制を読む』
という項目も設けております。

是非、最後まで楽しんで戴ければ嬉しいです。

※物語として楽しみやすいように、聖書的要素を抑えてあります。
前後のストーリーや言い回し、背景など、筆者の多少の脚色が御座いますことをご了承くださいませ。

目次

はじめに

節制編 第三部では、
『トビト記』という物語を取り上げてみたいと思います。

この物語を通して、
登場人物の行動や考えをイメージしたり、
物語を読んでどんな感想を得たのか?
物語全体で何を読者に伝えたいと思うのか?
そして、この物語から自分は何を考え、どのような人で在りたいと思うのか…?

などを考えて戴ければと思います。

イメージや感想というのは、その人それぞれで違ってきます。
何故なら人は、一律に同じ人生を歩んでいないからです。
AさんにはAさんの日常があり、
仕事があり、恋があり、考え方があり、感じ方があります。

物語の作者の伝えたいことと、読者の受け取り方が違うこともあるでしょう。
だからこそ、
ひとつの物語から様々なイメージが出来ますし、どのように感じても良いわけです。
「あなたの感想は間違っているよ」
「あなたの考え方は間違っているよ」というのはあるはずがありません。

本気のタロット講座では、
小説や、映画、漫画…
何でも良いのですが、
漫然と読んで「あ~面白かった!!」で終わるのではなく…
その作品に『他人の人生の疑似体験』というレベルで触れ、
自分の気付きとしたり、作中の人物の考え方や人生観などを垣間見て、
作中ではありますが、多くの人と接し、様々な価値観、人生観に触れること。
彼らの良い部分は積極的に自身に採用していくことなどを狙いとしています。

下の記事、
タロットを上達したい方にお勧めの方法
にて詳しくお話しておりますので、併せてご覧戴ければ嬉しいです。

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タロットリーディングは感情、思考、思慮、イメージ…etc.
様々な要素を言葉に表現していく占術です。

ですので、
本記事で取り上げていることは、
全てタロットリーディングの力に成ってくれます。

追伸:
節制のカードに登場する天使は
四大天使のひとり「ラファエル」という説があります。

ラファエルは医療、健康、旅の守護天使です。

このラファエルが出てくる物語と、
節制のカードとをリンクさせることでも、
一風変わったリーディングを楽しむことが出来ます。

少しトリッキーな
タロット講座になりますが…。

タロット大アルカナ
節制編第三部 『トビト記』
是非、最後まで楽しんで戴ければ嬉しいです。

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~トビト記~

~scene 1~

あるところに
名を『トビト』という人の出来た者がおりました。

彼は自分のことよりも
相手の利益を優先するような人で、
誰に対しても決して嘘をつかず、
困っている人には手を差し伸ばし
自分のできる範囲で最大の施しする…

神を愛し、罪を行なわず、
神を愛するように身近な人間を愛する。
義人(ぎじん)と呼ばれるような人でした。

そんな彼ですから、
周囲の人達にも多く愛されています。

ですがある日、
トビトの身に事故が起こってしまいます。

彼が仕事をひと段落し、
家の塀の傍らで座って陽を避けていた時のこと、
その塀の上に一羽の雀がとまりました。

「雀が塀にとまった」

彼がその雀を一目見ようと上を見上げた時、
雀はフンを落としたのです…
そのフンは運悪く彼の両目に落ちてしまいました。

トビトは慌ててフンを拭いましたが、
両の目にこびりついたフンは、白いシミとなってしまったのです。

視界を見失って慌てるトビト。

彼は治療をするために医者へ連れていってもらうのですが…
治療のために処方された目薬では、
塗れば塗るほど両目のシミは広がっていきます。

そしてついに
トビトの目は見えなくなってしまいました。

彼は深く悲しみました。
周りの人たちも、トビトが光を失ったことに悲しみを持ちました。

~そして光を失ったまま、4年もの歳月が流れました~

トビトにはアンナという名の妻がおります。
彼が光を失ったなか、彼女は羽織りの仕事をして家計を支えていました。
ある日、
彼女が出来上がった品を届けると、
注文主は賃金を全額くれた上に、家計の足しにと、子ヤギを一頭くれました。

喜んで家路に急ぎ、夫に今日の出来事を話そうとするアンナ。
しかし家に着き、夫にその話をする前に子ヤギが鳴いたのです。
その鳴き声を聞いて、トビトは妻に問いただします。

トビト:
この子ヤギはどうしたのか?まさか盗んだものではないだろうな?
持ち主にすぐに返しなさい。私たちは盗んだものを食べてはいけないのだから。

もし、トビトの目が見えていて、
気持ちが落ち着いている状態でしたら
このような言葉は出てこなかったかもしれません。
今までずっと、
正義と真理の道を進んできたトビト。
光を失った悲しみも加わって、冷静な瞬間を迎えられなかったのでしょう。

妻は「これは賃金以外に私に贈られたものです」と説明をしましたが、
それを信じてはもらえず、早く持ち主に返せと言われてしまいます。

アンナはとても悲しんで言葉を返します。

アンナ:
あなたが今まで多くの人にしてきた施しは、どこにあるのでしょうか。
あなたの正義はどこにあるのでしょうか。
あなたが憐れみや正義を行なう人だと、私もみんなもそう思っています。

その言葉を聞き、トビトは深く悲しみ、涙を流しました。
妻を信じることが出来ず、罵ってしまったこと、
そして光を失った悲しみ、周りの人への気持ち、
自身が神の掟に背いていたことの悲しみなど
様々な思いが巡り…

「もはや自分は地上に居るよりも、天に解き放たれた方が良い」

正義と真理の道を歩んできたが故、
その悲しみの重さに耐えられず
自身が天に解き放たれることを神に祈ったのです。

サラの結婚と不遇

~scene 2~

メデア地方のエグバタナという場所に
ラグエルという男が住んでいました。

彼には名を「サラ」という美しい娘がいました。

彼女はとても美しく、気立ての良い娘です。
そして、幸せな結婚を望む年でもありました。

気立ての良さと
美しさを兼ね備えたサラですから、
生涯を寄り添いたいと願う男性は沢山いました。

しかし、
めでたく結婚となったとしても…
新婚の初夜に、
夫は謎の落命を遂げてしまうです。

幸せな結婚を願っていたサラ…
彼女の心は失意に満ちてしまいました。

しかし、
周囲の言葉や笑顔に励まされながら、
少しずつ元気を取り戻していきます。

そして暫くの時が経ち、
彼女に再び縁談がやってきます。

しかし、
またもその夫は、新婚の初夜に謎の落命を遂げてしまうのです。

サラは
「一体なぜこのような事が起こるのか?」
夫の不慮を悲しみ、自身の運命を嘆きました。

話を先取りしますが、
実はこれは七度も続くのです。
その謎の正体は、
彼女に好意を持ち取り憑いた…
「アスモデウス」という悪魔の仕業でした。

その悪魔は、
サラ自身には手を出しませんでしたが、
サラと結婚する者に対し嫉妬をし、遂にはその初夜に乗じて始末をしてしまうのです。

サラの夫の謎の新婚初夜落命事件。
悪魔の仕業であるとは
サラを含め、親も従者も街の人も、誰も知る由もなく…
街にはこんな噂が流れていました。

サラは…あの家は呪われている。

いくら気立ての良い、美しい娘でも
結婚をして、その初夜に男性側が必ず命を落とすのでは…
サラを見初めていた多くの男性も
彼女との結婚を考える事から離れていきました。

『サラは美しく、素敵な女性だが呪われている』

やはり誰も命までは落としたくなかったのです…。

そして
追い打ちをかけるように、
サラは従者にも辱めの言葉を聞かされます。

従者:
あなたが7人の夫を呪っているのです。
7人の夫に嫁いでいるのに、
その内のひとりの名さえ呼んだことが無いではありませんか。
あなたも彼等と一緒に行きなさい。
そして私達がどうか永遠に、
あなたの娘や息子を見ることがありませんように。

従者からの言葉を聞き、
サラは深く悲しみ、嘆きました。
そして、
彼女は自害をしようと心に思いましたが、
もしそんなことをしたら
父を悲しませる以外のなにものでもなく、
そればかりか
父のことさえ裏切ってしまう事。
ならば神に祈って、天へと解き放ってもらった方が良い…
サラは悲しみの故に神に祈りを捧げました。

サラ:
憐れみ深き主よ、
あなたの全ての御業が、永遠にあなたを褒め称えますように。
主よ、あなたは私が男性との
いかなる汚れからも潔らかであることをご存知です。
私は、私の名も、父の名も汚すことはありませんでした。
私は父の一人子で、父には後を継ぐ息子もおりません。
父の親族も近くにはおらず、私がその妻となるような親戚もおりません。
私の7人の夫は既に天に召されました。
私はどのようにして…
これ以上、生きられましょう。
もし、私を天へと解き放って戴けぬなら、せめて憐れみを…
今後、このような辱めを受けることのないようにしてください。

サラのこの祈りは、
トビトの祈りと同時期、同時刻でした。
この2人の祈りは、
同時に天に聞き届けられることになるのです。

そして一見バラバラな物語は…
ひとつの巡り会わせとして繋がっていくことになります。

息子トビヤへ…

トビトには、
名を「トビヤ」という息子がいました。
父はその息子に対して、遣いを申し付けます。

それは20年前、
メデアという地方にいる「ガパエル」という同胞に預けた銀十タラント。
それを息子に譲るため、彼の元まで受け取りに行かせることでした。

トビトは、銀のことを思い出した時、心の中でこう思いました。

『私の祈りが成就すれば、
 私は天へ帰すことになる。
 我が子トビヤに
 銀のことについて話しておかねば…』

トビトは息子を呼ぶと、
天へ召す前に、
自身が歩んできた人生にとって大切な心根と、同胞に預けたお金の話とを息子に教えました。

────────────────────
私は、近いうちに天へと解き放たれるであろう。
その前にトビヤよ…
お前に教えておくべきことがある。

私を丁寧に葬ってくれ。
母を敬い、母が生きている限りは見捨てたり、悲しませることがあってはならない。
お前が彼女の胎内に居た時、彼女が多くの危険に遭遇したことを思い出してほしい。

そしてトビヤ、罪や倫理、道徳に背いて生きることの無いように。
真実を実践する人は、いつだって不遇から護ってもらえるから。

自身の持ち物から施しを与えなさい。
飢えている人にはあなたのパンを、
裸の人にはあなたの衣服を与えなさい。
その時、利害などを考えてはならない。
自分で自分を卑しい者と思わぬよう、平等に接しなさい。
そうすれば、あなたは神の顔から背けられることはない。

ただ、無理をしてはいけない。
豊かならば豊かに、財産が少なければ少なくて良い。
そこを恐れずに、施しをしなさい。
それをすることにより、苦難の日に備えて、自身の為に宝を積むことになるのだから。
どんなことでも、与える者は与えられるのだから…。

トビヤよ…
倫理に背いた恋をせぬよう注意し、自身の兄弟や仲間を愛しなさい。
心の中で、その者たちよりも自分の方が偉いと考えてはならない。
下手に出る者は高くされ、高い場所から見る者は低くされる。
高慢の果てには、不安と滅びが待っているから…。

自分がされて嫌なことは、人にもしないように。
自分の全ての振舞いが、自分に還ってくるものと思いなさい。

トビヤよ、
あなたがこれを忘れ去る事の無いように
これらを心に留めなさい。

そしてトビヤよ、
お前は、私達の同胞から妻を迎えなさい。
私たちの先祖たちは、皆同胞から妻を迎えた。
だからこそ子宝に恵まれ、子孫が地を継いだのだから…。
────────────────────

トビトはこのことを息子に伝えると、
次に同胞に預けた銀の話を息子にしました。

トビト:
さて、我が子よ。
メデアのラゲスに住んでいる
「ガパエル」という兄弟に、私が銀十タラントを預けてあることをお前に教えておこう。
私達が貧しくなったことを不安に思うな。
お前が神を畏れて罪を避け、善に生きるならば、良きものが沢山お前に授けられる。

息子は父に対して答えました。

トビヤ:
父よ、あなたのご命令は全て実行致します。
しかし、その方からどのように銀を返してもらいましょう。
その方と私とは、お互いを知りません。
私が行ったとて、どのように父の息子であることを証明しましょう。
それに私は、メデアに行く道もわかりません。

すると父は、その証明の仕方を息子に教えました。

トビト:
彼と私は、お互いに自筆で書いたものを渡し合い、その証文を二つに分けて、お互いにそれぞれ一方を持っている。
それを彼の持つものと合わせれば、それが証明となる。
私はその証文と一緒に銀を置いてきたのだ。
そしてメデアへの道のことならトビヤよ…
お前のために一緒に行ってくれる信頼できる人を探しなさい。
旅が終わるまでの間、私はその人に報酬を支払う。
安心して、お前はガパエルから銀を受け取りなさい。

アザリアという若者

トビヤは父の言いつけ通り、
道に詳しく、自分と一緒にメデアへ行ってくれる信頼できる人物を探すことにしました。

その日、家を一歩出てみると、
目の前に一人の若者が立っていました。

トビヤは彼に尋ねました。

トビヤ:
若者よ、あなたはどちらの方ですか?

若者:
私はあなたの同胞です。
名を「アザリア」と言います。
仕事を求めてここへやってきました。

トビヤも自己紹介をし、
仕事を探しているという彼に対して質問を続けました。

トビヤ:
私はトビヤと言います。
初めましてアザリア。
いきなりですが、あなたはメデアへ行く道をご存知ですか?

アザリア:
はい。私はそこへ何度も行ったことがあります。
ですのでメデア行くための
あらゆる街道の詳しい道を知っています。
私がメデアのラゲスという場所へ行った時、そこに住んでいる同胞「ガパエル」の家にも泊ったことがあります。

それを聞いてトビヤは、
自分と一緒にメデアへ行ってくれるよう頼むと、彼は快く承諾をしてくれました。

トビヤは直ぐに父のもとへ戻り、
そのような若者が一緒に旅をしてくれる旨を伝えると、
父はアザリアを自分のもとへ招き、まず初めに自分から挨拶をしました。

彼はトビトを見て言いました。

アザリア:
あなたに多くの喜びがありますように…。

彼の言葉にトビトは答えます。

トビト:
今後の人生、私にどのような喜びがありましょうか。
私は失明をし、光を失いました。
人の声は聞こえても、その姿を見ることが出来ないのです。

アザリア:
どうか元気を出してください。
神は、間もなくあなたのことを癒してくださるでしょう。

トビトは、
アザリアに不思議な癒しを感じながらも
彼が息子と共に旅に出るのに信頼に足る人物なのか?
それを確かめるために、
その名を聞き、彼が誰の子なのか?どの血筋なのか?を聞きました。

アザリアはトビトに、
どうしてそれを知る必要があるのかを聞き返しましたが、
信頼できる人物かどうかを知るためという事が分かり、トビトに自身を名乗りました。

アザリア:
私はあな
たの同族のひとり、偉大なるアナニヤの息子、アザリアです。

トビトは彼に対して不躾な質問をしたことを詫びました。
そして、
そのアナニヤという人物を知っている事、
共にエルサレムへと参拝したことがあり
その人物が道を踏み外したことが無いということも知っていると話しました。
『だからこそ、あなたの事も信頼できる』と…。

その後で、改めてトビトからアザリアにお願いをしました。

トビト:
あなたに1日、1ドラグマの報酬と、
息子にあげるのと同じに必要な物を差し上げます。
どうか息子と一緒に行ってください。
あなたの上に祝福があるように。
神の遣いが2人の上にあって、旅路を護ってくださりますように。

アザリア:
一緒に行きましょう。
何も心配は要りません。
元気に出発して、そしてまた元気にあなたの元へ戻ってきます。
旅路は安全なのですから…。

トビトは息子を呼んで、旅の支度をさせました。
そして祝福の言葉と共に、2人を見送りました。

天にいます神があなた方と共にあってあなた方を護り、また元気で私たちのもとへ戻って来れますように…。

トビヤは父と母に接吻をして旅立ちました。

息子を心配して涙を流す妻アンナ。
トビトは彼女に言いました。

彼らには良い天使が同行し、
そして旅は順調に進んで、必ず元気で戻ってくる。
だから元気を出しなさい…。

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旅の始まり

ゴヤ〈トビアスと大天使ラファエル〉

トビヤはアザリアと、そして一匹の犬と共に…
いよいよメデアのラゲスに住む、ガパエルのもとへ向けて出発をしました。

アザリアは多くの知識を有する若者で、
道中、トビヤに様々な助言をしてくれます。

旅の1日目、
彼等はテグリス川のほとりに着きました。
二人は寝る場所を作り、トビヤは足を洗うため川に入ります。

その時、一匹の大きな魚が上がってきて、トビヤの足に喰いつこうとしました。
トビヤはびっくりして叫びましたが、それを見たアザリアはいたって冷静。
トビヤにその魚を捕らえるように言いました。

大きな魚に肝を抜かれたトビヤでしたが、
アザリアの冷静さに正気を取り戻し、魚の下顎を掴むと、そのまま川から引き上げることに成功しました。

アザリア:
その魚を切り裂いて、胆汁と心臓と肝臓を取り出してください。
それらは大切な薬として役に立ちます。
他の内臓は捨てても構いません。

トビヤ:
兄弟アザリアよ、これらの内臓は何の効能があるのでしょうか?

アザリア:
魚の心臓と肝臓は、悪魔や悪霊に取り憑かれた男女の前で燻してください。
そうすれば、どのような悪霊も逃げ出して、二度とその人には近づかなくなります。
胆汁は目の薬です。
もし、目に白いシミの出来た人がいたら、その場所に塗ってください。
そしてその白い部分に息を吹きかけてください。
そうすれば、その人の目はたちまち良くなります。

今まで知らなかった知識に触れ、トビヤは感動しました。
この夜、
トビヤはアザリアに勧められ、残った魚の肉を焼いて食べました。
そして少し語ったのち、明日の旅に備えて寝ることにしました。

サラを妻に迎えよ

旅の数日目、
2人は足どりも軽快に、メデアという地方に踏み入りました。
そしてエグバタナという場所にほど近いところまで来ると、アザリアは話を切り出しました。

アザリア:
兄弟トビヤよ。
私たちは今晩、この地の「ラグエル」という男の家に泊まらなければなりません…。
彼はあなたの親戚にあたる人だからです。
そして、ここからが大切なお話です。
彼には「サラ」という一人娘がいます。
思慮深く勇気があり、とても美しい女性です。
彼女を妻として迎えてください。
あなたは誰よりも彼女に近い血筋に在り、彼女の父の財産を相続する資格があります。
今夜、私は父親に、娘さんを花嫁として迎えさせてもらえるよう話しましょう。
あなたがどんな人よりも娘に相応しいと知れば、父親はその結婚を拒んだり、娘を他の男と結婚させたりすることはしないでしょう。
…ですから兄弟よ、私の言う通りにしてください。

唐突な話に驚くトビヤ。
心を整理し、アザリアの話に返します。

トビヤ:
兄弟アザリアよ、その娘の噂は、この街に来てから私の耳にも入っています。
それによれば…
7人もの夫に嫁いでいるけども、彼女には悪魔が取り憑いていて…
その新婚の初夜に夫が落命を遂げているというではありませんか。
悪魔は取り憑いている娘には危害を加えないが、近づく男を次々と始末していると。
そう人々が言っているのを聞きました。
だから私は恐ろしいのです。
それに、私は父のひとり息子です。
私が先に命を落としたら、父母に不慮があった時、私以外に葬る息子がいないのです。

アザリア:
兄弟トビヤよ、あなたの父はこう言いました。
私達の先祖と同じように、妻は同胞から迎えよと。
さすれば、地を継ぐ子孫は途絶えることがないと。
彼女は、その血筋に最も近い人です。
ですからあなたは父の願いを受け、彼女を迎えなければなりません。
私はその夜の食卓で、父親に娘をあなたの花嫁にしてもらうよう話しましょう。

トビヤは彼の話を聞き、
サラという女性が父の家系に属する人である事を知りました。
トビヤは彼女との運命を受けたように彼女に強く心を惹かれ、その結婚に向けて動き出します。

悪魔退治の秘策

サラとの結婚を決意したトビヤに対し、
アザリアは具体的な悪魔退治の方法を伝えました。

アザリア:
兄弟トビヤよ、悪魔のことは心配しないでください。
この旅の初日、あの川で私が話したことを覚えていますか?
あなたはあの夜、大きな魚から胆汁と心臓と肝臓を取り出しました。
彼女との新婚の初夜、
部屋で魚の心臓と肝臓とを共に、お香の灰の上に置いてください。
すると、その匂いが立ち上ります。
悪魔は燻しだされて彼女から離れ、もう二度と、その姿を現すことはないでしょう。

アザリアは続けました。

アザリア:
そしてトビヤよ…
あなたが彼女とひとつになろうとする前に、
これから先、あなた方の上に憐れみと護りがあるよう、神に祈ってください。
あなたは彼女によって子をもうけ、子供たちは永く地を受け継いでいくでしょう。
だからトビヤよ、あれこれと思い煩わないでください。

トビヤはアザリアの話を聴き、
サラを迎えるため、悪魔と戦う決意を固めました。

サラの両親の元へ

フィリッポ・リッピ作 1472-82年

暫くの後、トビヤとアザリアはエグバタナに到着しました。
するとトビヤは直ぐに、
サラの父親であるラグエルの家に案内するようアザリアに言い、二人は彼の家に向いました。
家に着くと、1人の男が庭の門のところに座っています。
彼が二人の会うべき男、ラグエルでした。
二人は自分たちから挨拶をすると、
彼は「ようこそおいでくださいました」と快く迎え、家の中に案内してくれました。
家には彼の妻「エドナ」もいます。

夫妻はトビヤに会うなり、
彼が親族、トビトにそっくりなことに驚き、色々と話を聞きたいと思いました。
どこからやってきたのか、
どこの生まれなのか、
もしかして親族トビトのことを知っているか。

夫妻の質問に対しトビヤは答えました。
自分がどこで生まれ、誰の息子なのか。
そして父は元気で暮らしている事。
最後にその父が、事故で失明をしてしまった事も話しました。

話を聞いたラグエル夫妻は、
トビヤが自分たちの同胞であることを知ると、
飛び上がって喜び、彼に接吻をし、
親族トビトの失明に対して涙を流しました。

婚姻の契約

夕刻…
食事のためにラグエルは、自身の羊の群れから一頭の牡羊をほふり、彼らを心からもてなしました。

二人は清めの為に身体や手足を洗って食卓に着きます。
そしてトビヤはアザリアに言いました。

トビヤ:
兄弟アザリアよ、サラとの結婚が上手くいくよう、ラグエルに話してください。

この言葉を聞いたラグエルは、トビヤに言いました。

ラグエル:
兄弟よ、今夜はどうか飲んだり食べたりして楽しい時間を過ごしてください。
あなたは私の最も近い親戚ですから、娘サラが嫁ぐのはあなた以外にありません。
モーセの書に従い、私達もあなた以外に娘を嫁がせることはありません。

しかし…

この時、
トビヤは「悪魔の話が来る」と瞬時に覚悟を決めました。

ラグエルはトビヤに娘の過去の結婚について話をしました。
7人の同胞に嫁がせたこと、
その7人が共に、新婚の初夜に命を落としたこと…
彼は悪魔の仕業とは知らないようでしたが、
トビヤとサラの結婚に、神のご加護があるようにと祈ってくれました。

ラグエルから話を聞き、
トビヤはなお一層、悪魔と対峙する勇気を湧かせました。

トビヤ:
この事柄に決着を付けましょう。
それまで私は、この食卓につくことはありません。

ラグエルは言いました。

ラグエル:
兄弟よ、娘はモーセの書に従って、あなたに嫁がせることを誓います。
あなたの元へ行くことは、天が定めていたからです。
あなたの姉妹と成る娘を迎えてください。
これからあなたは彼女の兄弟であり、彼女はあなたの姉妹です。
彼女は今日より、永遠にあなたの元に居ます。
今夜、天の護りと、平和があなた方の上にありますように。

そしてラグエルは娘サラを呼ぶと、
彼女の手を取り、トビヤに向かって言いました。

ラグエル:
律法に従い、娘を妻として迎えてください。
そして無事、あなたの父の元へ連れて行ってください。
天が、あなた方をお護りくださりますように。

最後にラグエルは妻エドナを呼び、
婚姻の契約書として、律法に従って娘を嫁がせることをパピルス紙に記しました。

ラグエルは妻エドナにひとつ部屋を用意させ、床を敷かせて娘サラをそこへ連れて行きました。

部屋に入り、エドナとサラは今までの様々な想いの詰まった涙を流し合いました。

エドナ:
サラよ、何も心配は要りません。
神があなたの悲しみにかえて、喜びを与えてくれますように…
サラの頬をつたう涙を拭うと、エドナは部屋を出て行きました。

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初夜と悪魔

ピーテル・ラストマン作 1624年

ラグエルとエドナに連れられて、トビヤはサラのいる部屋の前に立ちます。
「神のご加護がありますように」
夫妻は彼を見送ると部屋を去って行きました。

トビヤはアザリアから伝授された悪魔退治の方法を丁寧に思い出します。

『魚の肝臓と心臓とを、
 新婚の初夜にお香の灰の上で燻れ!!
 その煙がアスモデウスの弱点である』

彼は勇気を奮い立たせ、サラの待つ部屋へと入っていきました。

今まで7人の夫の最期を見てきたサラ…
不安に駆られないはずはありません。

しかしトビヤが部屋に入ってきた瞬間…
サラ本人にも分かりませんでしたが、
何故か彼女は、彼に祝福を感じたのです。

この初夜に
トビヤはアザリアに教えられた通り、
魚の心臓と肝臓を袋から取り出し
お香の灰の上で燻し始めました。

トビヤの行動を見守るサラ…
お香の煙は部屋中を覆っていきます。

むせ苦しい空間で、
サラもトビヤも、その煙に覆われていきました。

と、次の瞬間。
大きな叫び声と共にサラの体から悪魔が飛び出しました。

アスモデウスです。

悪魔は煙に巻き付かれ、たまらず部屋の外へ逃げて行きました。

その瞬間を待っていたアザリア…

彼は背に翼をたくわえ、大きく羽ばたいて逃げ去る悪魔を猛スピードで追って行きました。
驚いたのはアスモデウスです。
煙から遠く逃げていたのに…
後ろを振り返ると、自分を捕えようとする者が空から追ってくるではありませんか。

あえなく捕らえられるアスモデウス。
アザリアによって縛り上げられ、エジプトの奥地に幽閉されてしまいました。

悪魔が外へ逃げ去った後、
トビヤはサラを起こし、自分たちに憐れみと護りがあるよう、天に祈りを求めました。

トビヤ:
主よ、あなたとあなたの御名とは永遠にほむべきかな。
あなたはアダムを造り…
『彼が独りではいけない、彼を支える者が必要だ』そのように、妻のエヴァをお造りになりました。
そして彼ら二人から、今日まで子孫が生まれていきました。
私は今、よこしまな心ではなく、真理に基づいてこの女性を迎えます。
私たちを憐れんで、二人が共に同じ年月を歩めるようにしてください。

祈りを終えると、トビヤとサラは眠りに落ちました。

夜明け前

月が落ち、外が少しだけ明けてきたころ…
サラの父親ラグエルは目を覚ましました。
そして従者を呼び寄せこう言います。

「外へ行って、人目のつかないところに墓を掘るように…」

彼は内心、
この結婚も、過去のそれと同じ結末を迎えたと思っていたのです。

墓を掘り終えると、
ラグエルは妻を通して、従者のひとりにトビヤが生きているかどうかを確認させ、もしそうでなければ…
誰にも気づかれないよう彼を埋葬させるようにと伝えました。

従者は重い気持ちを胸に、サラの部屋の扉を開けます。
そこで目にしたのは…
落命を遂げたトビヤではなく、穏やかに眠っている二人の姿でした。

従者は飛んでラグエルの元へ戻り、
『彼は無事に生きています!!』と伝えました。

それを聞き、ラグエルは天に祈りの言葉を捧げました。

ラグエル:
神よ…
清く曇りなき賛美によってあなたに感謝を致します。
あなたは私を喜ばせ、私の予想によらず豊かな憐れみをかけてくださりました。
そしてあなたは、彼ら二人へも憐れみをかけてくださりました。
主よ、彼らを憐れみ、護り、喜びと共に二人の生涯を全うさせてください。

祈りの後、
ラグエルは夜の明ける前に、従者に墓を埋めるよう命じました。

新しい朝

輝かしい朝の陽が昇り…

トビヤとサラ、そしてラグエル夫妻と従者たちにも、今日から新しい日々が始まります。
ラグエルは、妻エドナと従者に伝えました。

「大量のパンを焼き、二頭の牡牛と四頭の牡羊の処置をしてください」

これらを食せるように準備すると、ラグエルはトビヤに言いました。

ラグエル:
14日の間、あなたとサラの為に婚宴を開きます。
トビヤよ、あなたはここで
私達と一緒に飲んだり食べたりして、
今日まで苦しんだ娘の心を喜ばせてください。
それともうひとつ…
私の財産の半分を受け取り、無事あなたの父親へ届けてください。
もう半分は、私と妻が天に召した時、あなたのものとなります。
私はあなたの父であり、エドナはあなたの母です。
私たちは共に、あなたとサラの傍にいます。

トビヤは、ラグエルの誓いを聞き、それを心に強く留めました。
そして彼の誓いに背く事のないよう、
この旅の最初の目的をアザリアに成し遂げてもらうようお願いしました。

トビヤ:
兄弟アザリアよ、
4人の従者と二頭のラクダを連れてラゲスへ行き、ガパエルにこの証明の割符を渡して銀を受け取ってください。
私の父の命は、きっとそこまで長くないでしょう。
1日遅れれば、それだけ父を悲しませることになると…あなたもご存知です。

アザリアは快く承諾しました。
4人の従者と二頭のラクダを連れラゲスへ…
ガパエルに会い、証明の割符を手渡しました。
そしてアザリアは、
トビトの息子トビヤが妻を迎えたこと。
その婚宴にあなたを招いていることを丁寧に伝えました。

ガパエルはそれを聞くと、
封をした銀の袋を数え、渡すためにまとめました。
アザリアは彼の家に一晩泊り、
翌朝二人は朝早く起きると、共に婚宴へと向かいます。
当日ラグエルの家に着くと、トビヤを宴席に見つけました。
ガパエルはすぐさま、彼の元へ駆け寄り、涙を流して挨拶と祝福の言葉を伝えました。

互いの両親の想い

トビトと妻アンナは…
息子が旅に出てから、一向に帰って来ないことに悲しみを覚えていました。

トビト:
息子は、ガパエルに引き留められているのだろうか?
それとも、ガパエルが亡くなっていて見つけることが出来ないでいるのだろうか。

アンナ:
これだけ帰って来ないなんて…
息子は天に召してしまったのです。

トビト:
アンナよ、思い煩うな…彼らは元気だ。
きっと向こうで、少々足止めを喰っているだけだ。
それに、息子と一緒に行った人は信頼できる人だ…
彼らはもうじき帰ってくるよ。

いくら慰められても、
アンナは息子のことに思い煩わない日はありませんでした。
毎朝外に出ては、日の暮れるまで息子の行った道を見渡しています。
そして陽が沈めば、彼女は涙を流し、夜も眠らない…
そんな毎日を送りました。

一方、
14日間の婚宴が終わった後、トビヤはラグエルの元へ行きお願いをしました。

トビヤ:
私を父の元へ行かせてください。
父と母は、もう私を見ることはないと…
そう嘆いているのが私には分かるのです。
ですからどうか
私をここから送り出し、父のところへ行かせてください。
私が両親を残してきたことを、あなたはご存じのはずです。

トビヤの想いを聞いたラグエル…
それでも彼に対して、ここに居るようにと願いましたが、
トビヤの切実なる願いに心を動かされ、娘サラと父の元へ行くことを承諾しました。

ラグエルは2人を送り出すために
男女の従者を彼らと共に。
そして牛と羊、ロバとラクダ、衣類、家具類
自身の全財産の半分を持たせ、彼の両親の元へと送り出し、祝福の言葉を伝えました。

ラグエル、エドナ:
無事で行ってください。
旅の道中、天の護りがあなた方2人にありますように。
私たちが生きている限りは、皆同じように栄え、
どうかあなた方2人の良き報せを受け続ける事が出来ますように。
そしてご両親が生きている限り、あなたがご両親を敬うことが出来ますように。

トビヤはラグエル夫妻に送り出され、喜びの内に帰路の旅へ。
彼は自身の旅を導いてくれた天地の主、万物の王に感謝を捧げました。

故郷へ

「Gerard Douffet の追随者作 1620年」

サラの住んでいたエグバタナを出たトビヤの一行。
数日の後、彼の故郷ニネベに差し掛かりました。

いよいよ近づいた時、アザリアはトビヤに言いました。

アザリア:
あなたは故郷を出発する時、ご両親の様子を覚えているでしょう?
兄弟トビヤよ、
私たちは先に行き、皆を迎えるために家の準備をしておこうではありませんか。

彼はトビヤの父が盲目であることを皆の前で明かさず、2人で先に家路を急ぐことを提案しました。

トビヤの家では
今も息子が行った道を、母アンナが座って眺めています。

今までは何もなく、誰も来ない道でしたが…
視線の先に2人の若者のシルエットが見えるではありませんか。

それが自身の息子トビヤと、
そして息子と一緒に旅をしてくれたアザリアだと判るのに時間はかかりませんでした。
そうと判ると、彼女は夫の元へ飛んでいって伝えました。

アンナ:
あなた見てください…!!
あなたの息子と、一緒に旅に出てくれたあの人とが帰ってきます。

トビトはそれを聞くと立ち上がり、
おぼつかない足取りで庭の門の外へ出て来ました。
久方ぶりの両親との再会…
アザリアは、トビヤが両親の近くに行く前に言いました。

アザリア:
さあ、魚の胆汁を用意してください。彼の目はきっと開きますよ。
私が以前伝えた事を覚えていますか?
その胆汁を彼の両目に塗ると
薬が収縮作用を起こして白いシミを両目から取り去ります。
さすれば再び視力を取り戻し、
彼はその両目に光を取り戻すでしょう。

トビヤは父に近づくと、父を抱きしめて言いました。
「お父さん、元気を出してください」
そして手に持っていた薬を父の両目に塗り、息を吹き込みます。
すると彼の目からは、みるみる白いシミが取り去られて行きました。

両の目に光を取り戻したトビト。
数年の歳月を経て、光と共に息子トビトの姿を見ることが出来たのです。
息子の首に抱きつく父…
泣きながら息子との再会、目に光を取り戻したことを神に感謝しました。
この奇跡を目の当たりにして、妻アンナも涙を流しました。
トビヤも旅が報われたことに喜び、言葉を尽くして神に感謝をしました。

息子は両親に…
今回の旅は、全てアザリアのおかげで上手く行ったこと。
ラグエルの娘サラを妻として迎えたこと。
沢山のお金や家具、牛や羊を頂いたこと。
そして後から、
妻サラと従者たちの一行が
このニネベの門の近くまで来ていることを伝えます。

トビトは喜び、神に感謝しながらニネベの門の方へ歩いていきました。
町の人達は、彼が誰の手も借りずに、力強く歩いてくるのを見て驚きました。

町の皆にトビトは
神が憐れんでくださり、私の目は再び開かれたと涙を流しました。

そしてトビトは、サラを祝福して言います。

トビト:
娘よ、ごきげんよう。
あなたを私の元へ連れてきてくれた神に感謝します。
あなたのご両親に…
そして私の息子と、あなたに多くの祝福がありますように。
娘よ、どうぞ祝福と喜びの内に、あなたの家にお入りなさい。

その日…
町の全ての人は2人の結婚と、トビトへの奇跡に喜びました。

アザリアへの感謝

ピーテル・ラストマン〈トビトとトビアスに別れを告げる天使ラファエル〉

ニネベに帰ってきたトビヤとサラ…
こちらでの婚宴が終わったあと、父は息子を呼んで言いました。

トビト:
息子よ、あなたと一緒に旅をしてくれたあの人に、報酬を差し上げよう。
今回の旅に感謝し、彼に余分にお渡しをしよう。

トビヤ:
今回の旅が上手く行ったのは全て彼のおかげです。
彼は私の旅を無事に導き、私の妻を癒し、一緒にお金を運び…
最後にはあなたを癒してくれたのですから。
私は、今回運んできた財産の半分を彼に差し上げても惜しくはありません。

二人はアザリアを呼び
今回の旅への感謝と頂いた財産の半分、そして祝福の言葉を伝えました。

その時、アザリアは二人に言葉を返しました。

アザリア:
主を褒め称え、生きとし生けるものの前で、
主があなた方にしてくださった多くの恵みを、言葉に言い表してください。
それは人々が御名を褒め称え、賛美するためです。
その感謝をはばかってはいけません。

罪と不義はあなた方の魂の敵と成ります。
善い行ないをしてください。
そうすれば災いはあなた方を避けて通るでしょう。

真実な祈りと、正しい施しをしてください。
与える者は与えられます。
施しを行うものは、生命を以て満たされるでしょう。

トビトよ…
正義と真理の道を歩み、
しかし事故によって光を失い人生を嘆いたあなたの祈りの前に…
そして悪魔によって夫を次々と失い、人生を嘆くサラの祈りの前に…
神があなた方を試みて、そして全てを巡り合わせるため、私をお遣わしになりました。

私の名はラファエル…
主の栄光の御前に立ち、主に仕える準備のある七天使のひとりです。

そう伝えると共に、
彼は光に包まれ、本来の天使の姿に戻ります。
驚きのあまりひれ伏す二人…
ラファエルは彼らに優しく言いました。

ラファエル:
恐れる事はありません。
私があなた方と一緒にいたのは、
私の意志によるものではなく神の御心によるものです。
あなた方に、これからの平安がありますように…。
さあ…私は、私をお遣わしになった方の元へ昇っていきます。
お元気でいてください。
そして、起きた奇跡を永遠に褒め称えてください。
主はいつでもあなた方の傍におられます。

二人に祝福の言葉を告げると、
ラファエルは天へと昇っていきました。

エピローグ

その巡り合わせは
誠実な心で生きてきた人達の苦難と、
たったひとつの祈りから始まりました。

この数か月間の多くの巡り合わせ…
それらは全て
天の導きにより実現されたものでした。

大いなる祝福と多くの奇跡、
そしてかけがえのない幸せ。
彼の地で巡り合った全ての人達は、天に感謝と賛美を捧げました。

トビトは、
息子トビヤが持ち帰った薬で再び目が見えるようになり、
息子夫婦と共に幸せのうちに人生を送ることが出来ました。

そして数十年の後、
父トビトと母アンナは、
彼らの見守る中で静かにその生涯を閉じました。

トビヤとサラは父と母を手厚く葬った後、
サラの故郷メデアのエグバタナへ越しました。

そこで彼女の両親と一緒に生活をし、
その最後を看取るまで二人の老後を手厚く養いました。

トビヤとサラはその後の人生、
「義人トビト」の歩んだように人としての正しい道を歩み…
そしてこの幸せがいつまでも続くようにと、
神の使いに導かれた
この大いなる巡り合わせに感謝を忘れることなく幸せに暮らしたのでした。

~fin~

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あとがき

この物語は、
単に物語として読み終えるには惜しいくらい
大切な事を伝えていると筆者は感じました。

例えば
第四節「息子トビヤへ」では、
トビトが息子に教えたことがありました。

作中の「──(罫線)」で囲まれた文章など
私たちの人生にとって大切な含みがあると感じました。

3つ挙げてみます。
①誠実に生きることは、多くの不遇から護られる。
②自分の持っているものの中で施しを与える。
③どのような立場になっても、高慢に成ってはならぬ。

これについて、
筆者はこのように解釈をしてみました。

①誠実に生きる

仕事でも、人間関係でも、
イカサマをせず誠実に取り組んでいれば、
何かの拍子に疑いをかけられた時や、大きなミスをしてしまった時など、
絶対に味方になって護ってくれる人が現れます。

何故なら、その人の誠実さをずっと遠目で見ていて、感じていたからです。
逆にイカサマばかりの人は、何かあった時には圧倒的に不利です。
だからこそ仕事も人間関係も、誠実に接していくことが大切だと考えています。

②施しを惜しまない

募金をしたりすることは勿論ダイレクトな施しですが…
何も金銭的なものだけが施しではないと筆者は考えます。

誰かを手伝うことも施しのカテゴリです。
相手に笑顔を向けることもそうです。
元気良く接することだって、相手の話を真剣に聴くことだって「施し」のカテゴリです。

『与える者は与えられる』という言葉がありますが、
こちらの振舞いよって
相手がポジティブな心を持ってくれれば、
快く接してくれたりと、どんなカタチであれ良いものとして還ってきますよね。
これが自分の事しか考えていない言動や振舞いをしていれば、みんな離れていってしまいます。
「施し」を金銭面だけで捉えないというのは、大切な視点だと思っています。

③高慢に成らない

『良きリーダーこそ、皆に仕える者であれ』という言葉があります。
これは心持ちのお話なのですが、
リーダーだからって荒く振舞うのではなく、
チームの目標を達成させる思考と同時に「和」を重んじていくことが大切です。
仲間の訴えを聴くことも、良い環境を作ってあげるのも…
リーダーだからこそ率先してあげるのが大切だと筆者は考えます。

勿論、その分リーダーの負担は大きくなりますが、還ってくるものも大きいはずです。
それは金銭的なものだけでは無く、心や信頼、環境として還ってきます。
傍若無人に振舞うリーダーの下では、誰も一緒に居たいとは思いません。
皆に仕える心を持っているリーダーだからこそ、
多くの仲間に慕われて大きくなっていくのだと筆者は考えます。

──────────────

この物語の登場人物は皆、心の清い人達でした。
だからこそ、不遇に置かれても救われましたし、旅も順調に行きました。
そして旅が終わって得たものは、とても大きなものでした。

「正直者はバカをみる」という言葉がありますが…
正直に生きるが故に騙されたり、損をみることがあるかもしれません。
ですが、それは人生においてほんの数ページの出来事だと筆者は考えます。
2割はバカを見るかもしれませんが、残りの8割はポジティブなものに護られるはずです。

番外編①「物語のラファエルを読む」

本記事は、
タロット大アルカナ
『節制編 ~第三部~』としてお送りいたしました。

折角ですので、
番外編として節制のカードのメイン
作中のラファエルをリーディングに活かしてみましょう。

トビト記では『アザリア』という人物として登場しましたね。

実はこういったお話は、
連想法タロットリーディングではヒントになってくれます。

例えば、
『アザリアがトビヤに、悪魔攻略への具体的な策を与えた』
という部分からイメージを膨らませてリーディングキーワードを考えてみます。

この時「節制」というカード全体で考えるのではなく…
「ラファエル単体」を切り取って、物語を基にキーワードを出していきます。

トビヤに悪魔攻略への具体的な策を与えた。
↓   ↓   ↓   ↓   ↓
「知っている」という事は武器になる、情報を大切にする、有力な情報を与える、助言をする、情報は旅を良きものにする、自身の専門性を活かす、知識を活かす、情報を活かす、相手の弱点を知る、敵を知り己を知れば百戦危うからず、行動する前に出来るだけ情報を集める…etc

というような面白いキーワード取りが出来ました。
タロットは自由な占術ですので、
節制のカード「なのに」このように読んでも良いわけです(笑)

番外編②「物語の背景から想像」

『ラファエルは旅の守護天使』でしたね。
この物語では「旅の巡り合わせ」とか「人との出会い」というテーマもありそうです。

それを踏まえてどのような想像が膨らみますでしょうか?

人と人は引力で引かれ合う。
この別れも何らかの意味がある。
この物事に携わったのは何かの巡り合わせだ。
というのも面白いですよね。

ちなみに「旅=旅行」という視点だけでなく
日常生活のシーンや人生という視点も加えると広がっていきます。

例えば就職、転職、引っ越し、出逢い、別れ…etc.
本来行きたい場所へはいけなかったが、この場所に来たのには何か意味がある。
この別れは、次なる出会いには必要なものだ。

といった「出会い」や「その巡り合わせ」をポジティブに変換するイメージです。

これらもこのカードで相談者様にお話をするヒントになります。
是非、様々なイメージを膨らませてみてください。

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この記事の最後に

物語をリーディングに活用する方法は、
今回で2回目になります。

第一回目は
ギリシャ神話を題材にしてみました。

『本気のタロット講座』では、
タロットカードの意味を暗記するのではなく
「絵」の各部分を切り取って、
感想や連想を膨らませながらリーディングキーワードに繋げたり…
文章や単語を頭の中で映像化して、言葉を繋げていくという方法をお伝えしております。

そうすることによって
例えば
『節制=バランス!!』といった
パワーキーワードに惑わされることなく変幻自在に読むことができます。

尚且つ、
複数枚ドローした際、相談内容への解答の矛盾を無くすことも出来ます。

イメージ、感想、連想と言いますのは、
個々人によって違ってきますので、
「それは間違っているよ」というのは一切ありません。

ですので
文章を読んで、単語を読んで、
絵や写真を観て、映画を観て…etc.
色々な感想を湧かせてほしいのです。

その感性は、そのままタロットリーディングの力に成ってくれるからです。

最後に、
ギリシャ神話を題材とした記事。
リーディングの矛盾についての記事。

2つのリンクを貼らせていただきます。

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それでは、
今回も最後までお読み戴き
誠に有り難うございました。

参考文献

トビト記(Wikipedia)
ラファエル(Wikipedia)
聖書入門-トビト記



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